今、若者からシニア世代まで平屋の需要が高まっており、中でも一人暮らし用の平屋住宅が密かに人気です。
シニアの方では、子供が大きくなり独立して空いた部屋や年齢とともに階段の上り下りの負担が大きくなり使わなくなった2階部分の部屋は、掃除やメンテナンスが行き届かず、老朽化が進むといったことが主な理由です。
若い方の間でも、将来を見据えて高齢者にやさしい広々とした空間やバリアフリー構造の平屋の需要が高まっています。
また、物を減らして無駄のないシンプルな生活が最近注目されていることも平屋の人気の理由でしょう。
シニアの平屋一人暮らしではバリアフリーを重視
シニアの方がより暮らしやすい平屋にするためには、玄関などの段差にはスロープを設けてバリアフリー化できるよう考慮し、ドアは車椅子が通れることを想定した寸法で引き戸を採用、部屋の段差をなくすことなどが重要です。
トイレや浴室も広くとり、手すりを儲け、ヒートショックのリスクを減らすために浴室暖房の設置なども検討するといいでしょう。
女性の平屋一人暮らしでは防犯面を重視
平屋の一人暮らしは高層階のマンションなどと比べると、どうしても防犯面が心配になります。
しかし、街灯が多く人通りの多い道路に面した土地を選んだり、窓は防犯性の高いガラスを採用し、勝手口は作らない、鍵のかかる網戸を設置するなど、しっかりと対策しておけば安心して暮すことが可能です。
また、あまりプライバシーを気にしすぎて背の高い塀や植栽を設置すると、逆に犯罪者が隠れやすく防犯性が低くなるため、外庭やバルコニーは外からの見通しを良くなるよう設計し、プライバシーはカーテンや雨戸で対策するようにしましょう。
防犯カメラやセンサー付きライト、ディスプレイ付きインターホンの設置も有効です。
一人暮らし用の平屋の間取り例
一人暮らし用の平屋の間取りでは、広々としたレイアウトで適度に窓を設け、明るく開放感のある空間になるように意識することがポイントです。知人や友人を招いたり、将来的にペットを飼ったりすることも意識してみるのもいいでしょう。
一人暮らしの場合、スペース効率の良い壁付けキッチンもオススメですが、料理が趣味で友人を招くことが多い方には、リビングを見渡せる対面式キッチンも人気です。壁付けキッチンに後から別途キッチン台を設置することでアイランド型の様な使い方も可能です。
また、平屋はバルコニーがないので庭やウッドデッキなどで外干しも良いですが、プライバシーが気になる場合は、コンパクトなランドリールームや日当たりと風通しの良いインナーバルコニーのような空間を設けると便利です。
1R、1Kタイプの間取り
1つの広い部屋で生活全般を行い、ベッドルーム、キッチン、ダイニングが一体になった1Rタイプやキッチンに仕切りのある1Kタイプの間取り。1Rタイプでは独立した広いキッチンと居室が一体になっているため、リビングスペースを広くとることができるため、大人数の友人を招くことも可能です。
部屋の間仕切りがない1R、1Kタイプの間取りであれば、生活動線もスムーズで、ベッド、ソファー、テーブルなどの家具を配置し、パーテーションやカーテンで仕切ったりすることで、レイアウトを可変し生活スペースを分けてスペースを有効活用できるため暮らしやすくオススメです。また、間仕切りが少ないことで建築費のカットにもつながります。
間取り(図1)は収納は少なくなりますが、物を減らしたシンプルライフを楽しむ快適な15坪の1Rタイプの間取りです。プライバシーが気になる方や忙しい方でも天候に左右されずにいつでも洗濯物が干せるやランドリールームを設置しています。
また、トイレや浴室は車椅子でも入れるよう広く取り、各部屋のドアは引き戸を採用しています。
1DKタイプ、1LDKタイプの間取り
リビング・ダイニング・キッチンと、1つの個室がある1DKタイプ、1LDKタイプの間取り。
温度管理が必要な園芸や熱帯魚、その他特別な趣味があったり、お客さんを招くことが多い方は1DK、1LDKのような個室がある間取りが便利でしょう。
個室は寝室としても使うことができ、将来的に家族が増えることが想定される場合は増築のことも考えて土地選びをするといいでしょう。
間取り(図2)は1人暮らしでは十分余裕のある20坪の1LDKタイプの間取りです。こちらも、トイレや浴室は車椅子でも入れるよう広く取り、各部屋のドアは引き戸を採用しています。
一人暮らし用の平屋の新築費用は?
一般的に2階建てよりも1フロアの平屋の方が建築費が安いと思われがちですが、実際には2階建てよりも1.2倍程度、建築費が高くなります。また坪数が小さくなる程、割高になります。
外観や建物形状、設備の内容よって価格は変ってきますが、例えば、
- 約15坪の平屋1LDKの場合の建物本体価格は、1,300万円~
- 約20坪の平屋1LDKの場合の建物本体価格は、1,700万円~
程度になります。
また平屋の場合、日当たりのことを考えると隣地との距離に余裕を持たせたいので土地にかかる費用も余裕を持って考えておく必要があります。
1人暮らし用平屋のメリット・デメリット
シニア、女性の方ともに共通する、平屋のメリットとデメリットを次にまとめます。
メリット
- 階段のない生活で老後も安心。
- 移動が楽で掃除やメンテナンスがしやすい。
- 間仕切りを少なくすることで冷暖房効率も上がり、部屋ごとの温度差を少なくできるためヒートショックのリスクも低くなる。
- バリアフリーにして車椅子生活にも対応しやすい。
- シンプルな形状の間取りで建物の高さがも低いため、地震や台風に強い。
- 建物に一体感があり、全ての部屋を有効活用しやすい。
デメリット(2階建てと比べて)
- 床面積が狭くなる。
- 洪水などで床上浸水した場合、途端に暮らせなくなる。
- 近隣に高い建物がある場合、プライバシーが心配。
- 近隣環境によっては、日当たりや風通しが悪い場合がある。
- 広い土地が必要で建築コストが割高になる。
- 部屋数が限られるため家族や同居人が増えるとプライバシーが守られにくくなる。
高断熱性住宅でヒートショック予防も
日本は寒い家が多いと言われていますが、WHO(世界保健機関)は健康上、室内の温度は18℃以上にするよう勧告しています。
「室温を2度上げると健康寿命が4歳のびる」
「室温を5度上げると脳神経が10歳若くなる」
という研究結果もあり、血圧の上昇や循環器系疾患、呼吸器系疾患などのリスクが上がるとされています。
このように室温と健康には密接な関係があり、特に高齢者になるほど家の断熱性能はとても重要です。
また、高気密高断熱住宅では、冬暖房を使わなくても外気温と室温の差が10℃以上もあり、夏でも太陽の熱が建物内部に伝わりにくく涼しく、一年を通してエアコンなどの冷暖房器具をあまり使わなくても快適に暮らせます。光熱費もかなり節約でき、CO2削減にも貢献できます。
平屋は上層階がない分、このような高気密高断熱住宅にしやすいというメリットもあります。
日本の省エネ基準
家の断熱性能を表す数値としてUA値(外皮平均熱貫流率)というものがありますが、世界水準では「0.28~0.38」(低いほど高性能)ですが、日本では関西の基準は「0.87」、北海道でも「0.46」(断熱等級6)です。
日本の高断熱住宅は世界の省エネ水準から大きく遅れており、平成11年に「次世代省エネルギー基準」という断熱化基準が制定され、ようやく欧米基準の最低レベルに達することができました。
平成28年に新たに「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」として次世代省エネルギー基準が改正されました。
ただしこれまでは努力義務の範囲でたが、2025年以降は法的拘束力のある「省エネ基準適合義務化」が適用され、「断熱等級4」を下回る建物は新築できなくなります。
断熱等級とUa値の対応表
断熱等級1 | 無断熱または等級2に満たないもの |
---|---|
断熱等級2 | Ua値1.67以下(※昭和55年省エネ基準) |
断熱等級3 | Ua値1.54以下(※平成4年省エネ基準) |
断熱等級4 | Ua値0.87以下(※平成28年省エネ基準) |
断熱等級5 | Ua値0.6以下(※ZEH基準) |
断熱等級6 | Ua値0.46以下(※HEAT20 G2相当) |
断熱等級7 | Ua値0.26以下(※HEAT20 G3相当) |
(IBECより出展:住宅の省エネルギー基準)
株式会社栄では、快適な一人暮らし用平屋の注文住宅のご提案をいたします。
2014年に一級建築士を取得、「株式会社 栄」の代表取締役として主に京都・滋賀にて街づくりに携わっています。
株式会社栄は昭和33年の創業時、大工を数人抱える工務店から始まり、地域の皆様の応援から、現在までに土木・不動産部門を用する総合建築会社として形を変えてきました。
長年培った技術と知識から、暮らしの本質を見極めた空間・デザイン・素材を追求、注文住宅についての役立つ情報をお届けしていきます。